大江健三郎「鳥」
「鳥」はノーベル文学賞作家である大江健三郎が書いた短編小説。
「鳥たちがやってきましたよ、ぼくのまわりに鳥たちがいまやってきたところです」とかれは男にささやきかけた。
男はきびしい横顔をかれにむけたまま運転に熱中していて、かれの呼びかけに反応をしめさなかった。しかしかれはそれを気にかけないほど、自動車のなかでの鳥たちの到来を幸福に感じていたのだ。鳥たちは、おれ自身に属しているのだ、おれはどんな遠い国へ追いやられても一生、孤独をあじあわないですむだろう、それは確かなことだ、とかれは考えた。
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「鳥」は短編集「見るまえに跳べ」に収められています。
- 見るまえに跳べ (新潮文庫)
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