村上春樹「とんがり焼の盛衰」「かいつぶり」
村上春樹の小説のモチーフは多種多様ですが、鳥類は割と多く扱われている気がします。
最近読んだ短編小説集の「カンガルー日和」には、鳥がモチーフのものが二編。
「とんがり焼の盛衰」
鴉(からす)たちは前と同じようにそれに群がったが、それがとんがり焼でないことがわかるとそれを吐き捨て、口ぐちに怒りの声あげた。
とんがり焼!
とんがり焼!
とんがり焼!…
「かいつぶり」(カイツブリは小さいカモのような水鳥です)
手のりかいつぶりはビロードの布で眼鏡のレンズを拭き、ため息をついた。右下の奥歯がしくしくと痛んだ。歯医者か、と彼は思う。もううんざりだ。…
- カンガルー日和 (講談社文庫)
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